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館長エッセイ

館長エッセイ「絵の上の旅」

 府中市美術館館長・藪野健は、印象的な青い空と記憶の都市を、油彩画で描きつづけています。同時に、東京を中心に街歩きをかさね、近代から現代へと変わりゆく風景を水彩で描いてきました。それらの中から、府中をはじめとする風景画を、エッセイとともに掲載していきます。

藪野健(やぶの けん)

2015年より府中市美術館館長。画家。1976年より府中市民。
1943年愛知県名古屋市生まれ。 1969年早稲田大学大学院で美術史を修了後、1970年から1年スペイン・マドリードのサン・フェルナンド美術学校に留学し、絵画を学ぶ。
帰国後、二紀会を中心に絵画発表を続けるとともに、大学で美術史、表現論、映像論を教える。武蔵野美術大学教授(絵画、表現論)を経て、早稲田大学芸術学校教授(1999から2010年)、早稲田大学基幹理工学部教授(2010年から2014年)
2007年に府中市美術館で個展「藪野健 記憶の都市」開催。
2009年日本芸術院会員。2014年早稲田大学栄誉フェロー、名誉教授。一般社団法人二紀会理事。
山田洋次監督の映画「小さいおうち」の絵画監修をつとめるなど、多方面で活躍している。

第1回 府中の町から

第2回 大学1年のことを思い出して

第3回 「都電に乗り、歩く」

第4回 「鳥越おかず横丁」

第5回 フアンに会う日  (2021年1月13日)

2021年の新年を迎えました。早速制作を始めています。
今年もよろしくお願いします。
藪野健

昨年はどこにも旅行できなかった・・・。

思いは名古屋に、京都に、広島に、愛媛、東北、九州、北陸と広がり北京、ローマ、パリ、ロンドンと記憶の町が次々頭の中を駆け巡る。
50年前の1971年1月1日には激寒のマドリードの大学都市から、都心に出かけた。旧市庁舎前の広場に腰を下ろし描き始めたのを思い出す。

旧市庁舎前の広場

振り返るとクエンカ生まれの建築家のゴメス・デ・モラ(Juan Gomez de Mora 1586~1648)が語りかけたように思った。
「君が今歩いてきた丘のアルカサール王宮は回教(Moro)時代の記憶の上に建てたんだ。構造のバランスが気に入っている。この市庁舎は建設中だった。完成を見ていない。王宮は国王フェリペ4世がとても好きになられ、一日中回廊をめぐっておられる。ディエゴ・ベラスケスもみかけた。ディエゴは宮廷の一室で絵を描いている。
君が描いている部分の足場に立つとそのアルカサール宮殿が一望できるよ。」
マドリードに心惹かれるのはゴメス・デ・モラの建築群があるからだ。旧市役所、プラサマヨール、僧院。それに今はないアルカサール宮、ブエンレティーロ宮殿。
まず地図を作り、幾つかの時代のマドリードに出かけたい。会話の続きが聞きたい。


「ゆく日に君に逢う」部分。2010年。中央、絵を描くベラズケス。後ろは1734年12月24日に焼失したアルカサール王宮。現王宮の場所。



マドリード地図



2019年12月18日から2020年7月17日。少しずつ描きこむ。ノート。

そこで50年前のマドリードの記憶をノートに起こし、デッサンも引っ張りだす。


「旧市庁舎」2011年9月19日描く。


2021年1月1日「建築家に会う日」を描き始めた。時代は1640年代、1930年代、1970年代、現在と混在している。アルカサール宮殿の形が少しずつ現れ、ゴメス・デ・モラが語りかけを再開し始める。これから9月までにこの200号を完成していく。この絵の隣に2点の下絵のままの200号がアトリエに並んでいる。


「建築家に会う日」2021年1月1日から

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