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松本竣介《ビルの横》

最終更新日:2020年7月17日

画像 ビルの横

まつもとしゅんすけ びるのよこ
昭和11年(1936年)板、油彩
26.2センチメートル×20.9センチメートル

 画面いっぱい、あふれんばかりに描かれたビル。上の方をみるとわずかなすき間に青空が見えますが、下の方はというと地上線は枠をはみだし、どこか落ち着きません。しかも、中央玄関と思われる三角形の屋根が右下に描かれていることからすると、この絵はビルの全景をとらえたものではなく、建物の左半分に注目したもののようです。作者はいったい何を考えて、このような奇抜な構図で描いたのでしょうか。
 松本竣介は、36年の短い生涯を通じ、透明感のある色調と詩情ゆたかな線の律動による建物のある風景や人物に秀作を残しました。この作品は、前年に二科展初入選を飾った《建物》などと似かよった作風をしめし、画壇デビュー当時の若い竣介の研究のあとが見られます。良く観察すると、板に紙を貼り込み、その茶色い下地を生かしながら、ブルーを基調とする抑制された色彩と、大胆な筆さばきで、対象の存在感を骨太くつかもうとしていることがわかります。
 制作当時、竣介は書いています。「歩いてゐて好ましい建物に打ちあたることは日常の習慣になってゐる。その時僕は荒々しい数本の線でその建物を失敬してくるだらう。建物を設計した技師だって知らないであらう美しさは僕だけの所有だ。しかも見ろ、もう建物は静止してゐるのではない。静止してゐるこの永遠な動きを、数本の線をたたきつけることによって自分の生活に変形してしまつたのだ。」(「生命の藝術」昭和11年4月号)
 "静止してゐるこの永遠な動き"、なにげなく街で出会った美、そしてその光景が自己との交感のなかで普遍にまで高められていく喜びを、竣介は小さな画面の中に定着させようとしたのです。
 ところで、この作品は翌年1月の第7回NOVA美術協会展に出品された、と考えられています。前衛的傾向を持った同展は、官憲の忌諱にふれ、一部作品の改変・撤去という事件がおこり、その年に協会は解散しました。時代は曲がり角にさしかかっていましたが、まっすぐに生きようとした画家の探求心のきらめきがこの作品からも伝わってきます。

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