
開催概要
展覧会名 | 橋口五葉のデザイン世界 |
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会期 | 2025年5月25日(日曜日)~7月13日(日曜日) |
休館日 | 月曜日 |
開館時間 | 午前10時~午後5時(入館は午後4時30分まで) |
会場 | 府中市美術館2階企画展示室 |
観覧料 | 一般 800円(640円) |
主催 | 府中市美術館 |
企画協力 | 一般社団法人インディペンデント |
お問合せ | 050-5541-8600(ハローダイヤル) |
橋口五葉といえば、女性の美しさを柔らかく表現した版画で世界的に知られています。けれども、五葉の手がけた仕事はそれにとどまりません。書籍の装幀やポスター、洋画や日本画とジャンルを超えて多彩に活躍しました。
五葉の仕事の出発点には夏目漱石の『吾輩ハ猫デアル』の装幀があります。漱石は古美術から同時代の英国美術にいたらるまで、美術に深い知識と関心を持ち、自らの小説にも数多くの美術作品を登場させています。五葉は美術学校在学中から漱石と交流を持ち、漱石に認められてその著作の装幀を手掛けるようになります。本展では日本の書斎空間を美しく彩った五葉装幀の世界を、50点近くの書籍によりご紹介します。
装幀に見られる職人との協業や素材へのこだわり、画面を花々や小動物のモチーフで埋め尽くす華やかな装飾性は、その後の絵画や版画の仕事にも息づいていきます。同時代のヨーロッパの美術潮流であるアール・ヌーヴォーと、琳派や浮世絵などの日本の伝統。それらが、五葉の美意識のもとに融合し、唯一無二の作品世界を生み出しているのです。
本展では、装幀を出発点として五葉の全仕事をご覧いただくことで、装飾や美術という枠組みを超えた橋口五葉の豊饒なデザインの世界をご堪能いただきます。
橋口五葉による夏目漱石著作の装幀 個人蔵(千葉市美術館寄託ほか) 撮影:上野則宏
展覧会構成
『吾輩ハ猫デアル』上・中・下編(夏目漱石著)1905~07年 個人蔵 撮影:上野則宏
第1章『吾輩ハ猫デアル』
夏目漱石は小説家としての出発点である『吾輩ハ猫デアル』を世に出すにあたり、美しい本を出したいとの願いを持っていました。五葉はこれまでになかった装幀でこの願いにこたえ、今でも日本の近代装幀史に大きな足跡を残す名作が誕生しました。
橋口五葉による泉鏡花著作の装幀 個人蔵(千葉市美術館寄託ほか) 撮影:上野則宏
第2章 五葉と漱石
五葉と漱石の交流は俳句雑誌『ホトトギス』から始まります。『ホトトギス』に新風を吹き込んだ五葉の挿絵の数々、さらに漱石との関わりから生まれた装幀の数々をご紹介します。青磁を思わせる色合いの表紙に鉄線の模様が浮かぶ『鶉籠』、表紙に漆塗りを施した『草合』から、スエードが装幀に用いられている『行人』まで、五葉が手掛けた漱石本が一堂に会します。
『浮草』(ツルゲーネフ著、長谷川二葉亭訳)1908年 撮影:上野則宏
第3章 五葉装幀の世界
五葉はブックデザインという言葉もまだない時代に先駆的な仕事を残しています。今見ても新しい、華やかなデザインで包まれた泉鏡花の著作の数々。表紙や見返しだけでなく、本文にまで装飾が施された『浮草』。本を立体としてとらえた五葉の装幀は、手のひらに収まる小さな世界に美しさが凝縮されたものとなっています。
第4章 五葉の画業
鹿児島で日本画を、さらに東京美術学校で西洋画を学んだ五葉は、それらを吸収して新たな表現を追究していきます。油彩で描かれた衝立形式の《孔雀と印度女》や、装飾的な花鳥イメージあふれる《黄薔薇》などの絵画作品はそうした探求の成果が結実したものです。
石販を三十五度刷り重ねた非常に贅沢なポスター《此美人》、絵葉書や雑誌といったグラフィックの数々からは、五葉の華やかなデザインの世界が浮かび上がってきます
《此美人》1911年 鹿児島市立美術館蔵
《黄薔薇》1912年 鹿児島市立美術館蔵
《孔雀と印度女》1907年 鹿児島市立美術館蔵
第5章 新板画へ
五葉は自ら浮世絵の研究を重ね、さらに九州・耶馬渓への旅を契機に自ら版画を手掛けることとなります。生前制作された作品は13点と僅かながら、今でも美しい輝きを放っています。スティーヴ・ジョブズも愛したと言われる珠玉の作品の数々をご紹介します。
《髪梳ける女》1920年 鹿児島市立美術館蔵
《化粧の女》1918年 鹿児島市立美術館蔵
橋口五葉(はしぐち ごよう)
1881(明治14)年、鹿児島市に生まれる。1899(明治 32)年に上京、当初日本画家の橋本雅邦に人門するが、同郷の黒田清輝の勧めで洋画に転じ、白馬会洋画研究所を経て翌年東京美術学校に入学。長兄・貢を介し夏目漱石と知り合い、『吾輩ハ猫デアル』の装禎を手がける。その後も日本近代文学を代表する作家の装禎を次々と手がけた。1907(明治40) 年東京勧業博覧会に油彩画による屏風絵《孔雀と印度女》を出品し二等賞、第一回文展に《羽衣》が入選。1911(明治44)年には三越呉服店の懸賞に応募し《此美人》が一等に選ばれる。その後、自身の浮世絵研究に基づき新板画の制作に取り組み、《髪梳ける女》などの傑作を生み出した。1921(大正10)年41歳で病没。
関連イベント
展覧会講座「橋口五葉のデザイン世界」
日時:6月8日(日曜日)午後2時 から *開場は午後1時30分を予定
講師:大澤真理子(当館学芸員)
講座室/無料/予約不要
展覧会講座「橋口五葉の生涯」
日時:6月29日(日曜日)午後2時 から *開場は午後1時30分を予定
講師:岩切信一郎氏(美術史家、本展監修者)
1階市民ギャラリー/無料/予約不要
鑑賞教室などのお知らせ
下記日程に、小学生などの団体鑑賞が予定されています。
なにとぞご理解、ご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
<時間帯> 午前:10時から12時頃 / 午後:1時から3時頃
<日程>
5月27日(火曜日) 午前
6月13日(金曜日) 午前
6月18日(水曜日) 午前
6月19日(木曜日) 午前
6月20日(金曜日) 午前・午後
6月27日(金曜日) 午前・午後
7月 4日(金曜日) 午前・午後
展覧会チラシ
アクセス
- 京王線東府中駅北口から
徒歩 17分
ちゅうバス府中駅行き「府中市美術館」下車すぐ(8:05から30分間隔で運行、運賃100円) - 京王線府中駅から
ちゅうバス多磨町行き「府中市美術館」下車すぐ(8:00から30分間隔で運行、運賃100円)
京王バス武蔵小金井駅南口行き(一本木経由)「天神町二丁目」下車すぐ
京王バス武蔵小金井駅南口行き(学園通り経由)「天神町幼稚園」下車徒歩8分
京王バス国分寺駅南口行き(東八道路経由)「天神町幼稚園」下車徒歩8分 - JR中央線武蔵小金井駅南口から
京王バス府中駅行き(一本木経由)「一本木」下車すぐ
京王バス府中駅行き(学園通り経由)「天神町幼稚園」下車徒歩8分 - JR中央線国分寺駅南口から
京王バス府中駅行き(東八道路経由)「天神町幼稚園」下車徒歩8分 - お車の場合は、美術館近くの府中市臨時駐車場(無料、54台収容)をご利用ください。
