2019年9月11日　市長コラム88　「楕円球の力」

東日本大震災から8年半。岩手県釜石市鵜住居町に半年前にオープンした「うのすまい・トモス」を訪れる機会がありました。震災の記憶や教訓を未来に伝え、生きることの大切さやすばらしさを感じ、憩い親しむ複合施設です。犠牲になった方への祈りを捧げ、釜石市防災市民憲章を学んだあと、津波によって流され拾得されたある展示物に目が留まりました。昔懐かしい茶色い革のラグビーボールです。

「第21回日本選手権優勝　新日鐵釜石ラグビー部」と記され、1984年1月15日の日付と選手たちのサインが書かれていました。北の鉄人(きたのてつじん)と呼ばれ、一時代を築いた人たちによるお宝ボールです。その年のその日、私は卒業を目前に控えた大学4年生。まだ体育会ラグビー部に所属していました。もちろん、その夢の日本選手権を見ていたのでとても懐かしく感じました。津波に負けず生き残った楕円球から私も力をいただいたのです。

さあ、いよいよラグビーワールドカップ2019(にせんじゅうきゅう)日本大会の開幕です。本市を拠点とする2つのトップチームから、主将のリーチマイケルさんをはじめ多くの選手が代表に選出されていますし、本市自体も公認チームキャンプ地です。品位、情熱、結束、規律、尊重を大切にするラグビー憲章やノーサイドの精神などが広がり、歴史や文化、政治や宗教を超えて世界を一つにする力が楕円球にあるはずです。