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亜欧堂田善《甲州猿橋之眺望》

最終更新日:2020年7月15日

画像 甲州猿橋之眺望

あおうどうでんぜん こうしゅうさるはしのちょうぼう
江戸時代後期 絹本油彩 一面
37.0センチメートル×67.0センチメートル

 奇妙な石橋、深々とした川面、豊かな緑をたたえる木々、そして青ともグレーともつかない空。にぶい光沢と濃厚な色合いをもった絵肌とあいまって、とても不思議で印象深い画面です。
 作者は、司馬 江漢と並んで著名な江戸時代の洋風画家、亜欧 堂田善です。いまの福島県須賀川市の商家に生まれた田善は、47歳の時に、時の領主であり、幕府の寛政改革の推進者としても著名な松平定信に画才を認められました。江戸へ出て、銅版画や西洋画法を修めましたが、この作品も、江戸で精力的に活躍していた頃の作と考えられます。
 甲州猿橋といえば、いまも山梨県大月市にあって、古くから甲州街道の名所として知られています。ところが、猿橋に足を運んだことがある人ならば、この作品に描かれている風景が、実景とおよそ異なることに気づくでしょう。実際の猿橋は、細かい木組みの構造をもった木造の橋なのです。実景からかけ離れた描写内容は、この作品の大きな謎でした。
 赤外線調査等で絵具層の下に描かれている下絵を調べると、この疑問に対するひとつのヒントが得られます。それによると、はじめ下絵では、橋を実際のように精密に描こうとしていたことがわかります。また川面に水鏡を表すなど、写実的な描写を構想していたようです。しかし、絵具を塗り込んでいく段階で、細かい描写は省かれ、橋は堅牢で大らかな曲線を描く、簡潔な形へと変更されていったのです。
 日本の油絵の歴史は、江戸時代にはじまります。そうはいっても、当時の油絵制作は、唐辛子やごま油を煮込んで、画人が自分で絵具を作るところからはじまりました。ここに描かれているのは、決して目の覚めるようなリアルな風景ではありませんが、油絵具の不透明でねっとりとした材質感そのものが新鮮だった時代の、作者の「絵作り」への情熱が伝わってくるようです。

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