中沢弘光《雨中の漁》
最終更新日:2020年7月17日
なかざわひろみつ うちゅうのりょう
明治32年(1899年)板、油彩
32.7センチメートル×23.9センチメートル
ちょうど百年前の海辺の情景です。足先をなでる波の冷たさ、頬に吹き付ける風の感触が伝わってくるようです。視線を邪魔するものはなく、開放的な気分を起こさせます。
上から空の灰色、山陰の群青、海のエメラルドと青、波頭の白、砂浜のやや暗色の紫。縦長の画面にこれらの色が水平に配され、抽象画のようにも映ります。
画家が好んで用いた紫には、どことなく懐かしい匂いがします。この頃中澤は、東京美術学校で黒田清輝に油絵を学んでいました。曇った空の下で沖に向かって竿を投げかける二人の姿は、遊んでいる風でもあり、25歳の画家自身の夏の甘い思い出が刻まれているのかもしれません。
年記(画面左下に「H.NAKASAWA'99」)と主題から、同年の白馬会出品作ではないかと考えられます。
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