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手嶋遥公開制作プロセス

最終更新日:2024年6月24日

2024年4月20日から始まった公開制作。ここでは、その過程をご紹介します。

最終日 6月19日

4月に始まった公開制作も、いよいよ今日でおしまいです。日本画の複雑な制作工程を、はじめからおわりまで追うことができました。公開制作室には浅間山を描いた大作が完成です。手嶋さんが山の中を歩いて実際に感じた光や、風や、色を、追体験できるような風景が広がっています。また手嶋さんは制作の傍ら、たくさんの来館者の方と交流し、作品についてお話くださいました。最後に行うのは、今週末からの展示に向けて作品を壁のどの位置にかけるか考え、設置する作業です。過去作品も展示するため、2枚のベニヤ板を白く塗り、展示スペースに使用するようです。

6月15日

作品に細かな修正を加えていき、ついに終盤です。作品の表面を見て、和紙に皺が寄っている箇所にやすりをかけ、なじませます。穴が開いてしまいそうなものですが、きれいに皺だけが削り取られます。浅間山で実際に見た、木に巻かれた蛍光色のテープは、そこだけ和紙を切り取り裏地の鮮やかな色を見せるようにして表現しました。大きな画面の中でもぱっと目を引きます。

6月9日

糊を用いて、パネルに絵を貼りました。パネル下側に絵が足りない部分があるため、新しい和紙に草むらを描き加えて貼っていきます。大きな木は、重ねることで遠近感を出しました。壁に展示して見え方を確認し、さらに重ねて描きたいところがあれば、一度壁から作品を降ろします。床に寝かせて作業するのは、絵具が垂れないようにするためだそうです。

6月1日

和紙を繋いだ大きな画面にこれまで描いてきました。次はパネルに貼っていくために作品をカッターで切り離します。このとき、和紙の継ぎ目で切るのではなく、画面の構成を考えて切っていきます。浅間山のスケッチをもとに、木々や植物の遠近を踏まえ、重ねたりしながら配置していきます。絵具をたくさんのせた和紙は水分を含んで収縮しているため、切り取ったものを組み合わせると、パネルのサイズが埋まらなくなる箇所が生じます。今度はそこを埋めるように描き足していきます。

5月26日

鮮やかな色に塗ったパネルを、壁に設置し始めました。これからパネルの上に作品を貼っていきます。このままだと強度が弱いため、先に裏打ちと呼ばれる作業を行います。生麩糊(しょうふのり)というデンプンを原料とする糊を用いて、作品自体の和紙よりも少し厚みのある和紙を作品の裏に貼っていきます。このときのポイントは、作品を描いた和紙の継ぎ目、つまり強度的に弱い箇所に重なるように裏打ちの和紙をあてていく点です。また強度のみを考えればより厚い和紙を裏打ちすべきですが、手嶋さんは強度だけでなく、作品の後ろからパネルの色がどれくらい透けるかという視点も大切にしています。

5月22日

山や林を歩き、自然の風景を描き集めたスケッチをもとに作品制作をおこなう手嶋さん。本画に取りかかってからも、感覚を新たにするため、何度もスケッチをしに出かけます。今日は午前中に浅間山へ向かい、水彩絵具でスケッチをしてきました。ご自身でパレットに詰めて固めた水彩絵具はとても長持ちし、大学受験のときから使っているそうです。公開制作室に帰ってきてからは、本画に様々な濃淡の色を少しずつ描き加えていきました。

5月4日、5日

大きく描かれた浅間山が部屋いっぱいに広がっています。輪郭線は墨を使って和紙の表から、そして絵具は和紙の裏からのせていきます。日本画の技法に、絹の裏から絵具をのせる裏彩色と呼ばれるものがあり、その技法を手嶋さんは和紙に施します。そうすることで、どの色もやや落ち着いた柔らかな印象に仕上がります。

土台となるパネルは、鮮やかな、朱色とも蛍光ピンクともとれる色に塗られました。下地の色は、絵で使っている色との補色関係を意識すると、濁らずきれいに見えると手嶋さんは言います。今回は緑色を主に用いて描いたため、緑色の補色である赤色に近い下地を用意しました。アトリエから持ってきたたくさんの絵具を組み合わせ、好みの色味を出すために試行錯誤を繰り返していきます。胡粉(ごふん)を染料で染めることでつくられる水干絵具(すいひえのぐ)は胡粉の白っぽさが特徴のため、より鮮やかな色を使いたい手嶋さんは、そこに蛍光顔料を混ぜて調整します。

5月3日

本画に使用するパネルが8枚、公開制作室に届きました。かなり大きな絵になりそうです。そして、ついに筆で描き始めた手嶋さん。一本一本、集中しながら線を選び、進めていきます。日本画の素材は修正が難しいため、スーッと動かす手の様子に、見ているこちらも緊張感が漂います。構成を考えるためにスケッチをもとに描いた小さな下絵、小下図(こしたず)をそばに置き、何度も確認しながら描いていきます。小下図を用意したあと、本画とは別に原寸大で大下図(おおしたず)を描いてから本画にうつるのが一般的な日本画の手順ですが、手嶋さんは大下図をあえて用意せず、小下図から本画を描いていきます。

4月24日、28日

手嶋さんは引き続き浅間山でスケッチしつつ、大画面の構想を練っています。描いていた木が先日切り倒されてしまい、切り株に変更になった部分があったようです。下張りに使う和紙はそのままではサイズが合わないため、手で割いて繊維を出してから糊でつなぎ、大きな画面にしていきます。

日本画は、実際に描きはじめるまでの作業が長いと手嶋さんは言います。今日も和紙に滲みどめの礬水液(どうさえき)を引き、着々と描くための準備を進めています。試しに描いてみた絵を鮮やかな下地の上に重ねて壁に貼り、実際の色合いも確認していました。色は、描き進めながら決めると迷走してしまうそうで、構成の段階でしっかりと決めるタイプだそうです。

初日 4月20日

午前中に浅間山でスケッチをしてきた手嶋さん。視点を変えて描いてきたスケッチを地形に合わせて並べ、壁に貼るところからスタートしました。水干絵具(すいひえのぐ)に膠(にかわ)を混ぜたりと、日本画ならではの工程が見られます。大きく浅間山を描くにあたり、土台となる麻紙(まし)の色を決めるべく、オレンジ色など鮮やかな絵の具を画用紙に塗ってみます。和紙から透けて見えるため、作品の印象を大きく左右する重要な色です。

絵具の滲みをおさえる礬水液(どうさえき)を引いた和紙と引かない和紙、その両方で描いてみて、質感を試します。礬水液とは、膠水(にかわすい)と明礬(みょうばん)の混合液で、絵具の定着を良くするものです。制作を間近で見られることにまだ慣れない手嶋さん、少し緊張気味です。

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